こんにちは。神戸大学の石川です。

 

我々の研究室では、“良く笑い、良く学ぶ”をモットーに、「呼吸リハビリテーションに関する研究とその啓蒙」を患者さんに笑顔になって頂けることを願いながら日々活動しております。

 

【高齢者肺炎:医療・介護関連肺炎(NHCAP)】

 日本では肺炎で亡くなる方が年間12万人を超え、死因別の統計でも2011年に脳血管疾患を抜いて、がん・心疾患に次ぐ第3位となりました。肺炎死亡の95%以上を65歳以上が占めており、そのほとんどが高齢者の誤嚥性肺炎であると報告されています。

ご周知の通り、我が国の高齢化は世界的にも類を見ない速度で進行しており、高齢者肺炎に対する対応は以前にも増して重要になってきています。

 

この現状に対して、2011年に日本呼吸器学会から医療・介護関連肺炎(Nursing and healthcare associated pneumonia: NHCAP)診療ガイドラインが出されました。

 

NHCAPガイドラインでは、NHCAPを以下のように定義しています。

①長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している。②90日以内に病院を退院した。③介護を必要とする高齢者、身障者。④通院にて継続的に血管内治療を受けている。

(①〜④のいずれかに該当するもの)

 

この定義からすると、日常の臨床場面で関わるほぼ全ての患者さんに当てはまります。

しかし、残念ながら現在の診療ガイドラインに呼吸リハビリテーションに関する記載はほとんどありません。

我々は“誤嚥しても肺炎にならない”という呼吸リハビリテーションの有用性を検証していくことを目的に研究に励んでおります。

 

 

【慢性閉塞性肺疾患(COPD)】

 慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease: COPD)は、別名たばこ病と言われており、原因の90%以上は喫煙です。たばこなどの刺激で気管支に炎症が起こり、肺胞が破壊されることにより、呼吸困難感が起こります。

我が国で治療を受けているCOPD患者は、約23万人程度とされています。しかし、実際には未診断COPD患者は約530万人以上存在すると報告されています。その原因の1つとして、スパイロメトリーと呼ばれる肺機能検査のみで診断が確定されるということが挙げられます。

 

高齢者はスパイロメトリーを正確に実施できない可能性はあり、患者さん自身でも歩いて息切れを起こしても年齢のせいにしていることが多く見受けられます。普段臨床で見ている脳血管障害・整形疾患・認知症などの患者さんで、喫煙歴のある場合、実はCOPDが潜在し患者さんの大きな問題点になっているかもしれません。

 

そこで、我々は呼吸リハビリテーションで行われる主な評価法である6分間歩行試験に着目して研究を行っています。

今後、在宅医療への転換がますます図られていきますが、在宅医療現場では病院に比べ検査データが圧倒的に少なく臨床場面での評価が非常に重要になります。“歩行”という在宅医療場面でも簡便に行える評価により、COPD早期発見、疾患重症度や予後予測への可能性を検証しています。

 

また、慢性呼吸不全患者に対する訪問看護・リハビリテーション介入による長期的効果、COPD患者のADL評価方法に関しても力を入れて研究に取り組んでいます。

 

 

【大学院生募集】

我々の研究室では大学院生を募集しております。

現在の在籍メンバーは、ほとんがが理学療法士・作業療法士・言語聴覚士として、臨床現場で勤務しながら大学院に在籍しています。

 

大学院で学んでみたいという気持ちがあれば、職種は問いません。

大学院進学をお考えの皆様!

患者さんがもっと笑顔になるような呼吸リハビリテーションについて、我々と一緒に考えていきませんか?

皆様と一緒に学べることを研究室でお待ちしております。

 

石川 朗

神戸大学大学院保健学研究科 地域保健学領域 教授

理学療法士 博士 (工学)

日本呼吸ケア・リハビリテーション学会評議員,日本義肢装具学会評議員